亡くなった姪は、決して荒れた環境で育ったわけではなかった。
むしろ恵まれていた方で、トロントのプライベイトスクール(私立の学校)に通い、トロント大学の修士課程を修了している。
公立の学校がタダであるカナダで、私立の学校に行くというのはそれなりに裕福な家庭の子供ということ。
日本でも私立はそこそこお金がかかるけれども、それよりも差は大きい。多くの子供は公立の学校に当たり前のように行くし、私の周りで子供を私立の学校に行かせたという知人はいない。
父親の仕事の関係で幼少期には日本に2年ほど住んでいて、そのあとニュージーランド、そしてロンドン。
どの地でも、会社(金融関係)が用意してくれるいい家に住み、ロンドンでも私立の学校に通っていた。
絵が上手で、おしゃれな子だった。
そんな恵まれた環境に育っても、ハードドラッグにはまってしまう。
私には全く想像できないことで、言えることと言ったら、もともとうつ病を持つ家系だったこと。
彼女の父親も鬱になりがちで、アルコールの量も多かったらしい。
その母も、父も。
ドラッグとアルコール中毒で警察にお世話になったり、自殺未遂をしたりが始まったころ、もう働けなくなって就労不能ということで政府からの援助で生活をしていた。
私にはそれもちょっと信じられなくて、どうして政府がドラッグ中毒に援助をするのかが理解できなかった。
中毒者を治す為にお金を使った方がいいのではと思ったから。
でも、そういう人達を強制的に入院させたり治療させたりというのはできないのだそうだ。
人権があるから。
親でも同じで、親だからそんな娘を軟禁して治療するとか、成人した子供に強要したりすることはできないのだそうだ。
私が親だったら、何が何でも力づくでも生活を変えて助けてあげたいと思うけれども。
そのあと姪は、自分からドラッグやアルコール中毒者や精神を病んでいる人を援助する施設に自分から入り、そこでセラピーを受けたりして自立に向かっていた。
かと思いきや、施設を出るとまた同じことの繰り返し。
一緒に暮らすボーイフレンドはそういう施設やグループで知り合ったやはり同じような境遇の人たちだから、結局立ち直ることができない。
家に戻ってきた時もあったらしいけれども、結局は自分から出て行ってしまう。
それを親は止められない。強制的に連れ戻すこともできない。
そんなことを何度も何度も繰り返し、ヘロインを使った人がそれでも足りずに手を出すという、かなりハードなドラッグの過剰使用で亡くなったらしい。
数日たって心の整理もできたからか、義姉は、ホッとしたとも言っていた。
もう心配する必要もない。
この何か月かは、いつか悪い知らせが来るのではないかと思いながら生活していたと言っていた。
とうとうその時が来たのだと、心の準備はなんとなくできていたのかもしれない。
お葬式はしない、お花もお金も要らないから送らないでくれ、何も気を遣わないで、誰にも知らせなくていいから、と言っていた。
姪、享年34歳。
R.I.P.
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